水素社会へ加速する欧州 道筋描けず遅れる日本

日本経済新聞(2020/09/21)より転載

欧州企業が水素エネルギーの活用を経営計画に着実に組み入れ始めている。特にエネルギー関連企業は脱炭素化を強く求められており、積極的な目標が目立つ。欧州で官民を挙げた水素社会への取り組みが加速する一方、日本では政府やエネルギー企業が水素活用の道筋を明確に描けていない。遅れを取り戻すには大胆な政策決定が必要だ。

17年に日本政府が策定した「水素基本戦略」では30年の水素供給目標が30万トンだったから、その野心的な目標の差は理解できるだろう。水素の用途も電力の貯留や燃料電池向けばかりでなく、製鉄所や化学工場などでの原料化、化石燃料の代替を見据える。

政府は19年時点で、水素と酸素を使って電気と熱を作る「家庭用燃料電池」が約30万台普及し、燃料電池自動車(FCV)などに充填する水素ステーションも世界最多の100カ所以上設置されていると胸を張っているようだ。だが、普及のハードルとなる価格の高さに本気で切り込もうという姿勢はみえない。

1月に取りまとめた「革新的環境イノベーション戦略」をみると、「50年ごろに二酸化炭素(CO2)を排出しない水素製造コストを10分の1以下(天然ガス価格並み)とする」という一文が掲げられたものの、そこに至る道筋や政策支援の在り方は依然としてハッキリしない。